エムエスシー製造株式会社は2021年8月に技術承継機構グループに参画しました。
増山耕一様はもともと設計・技術を担う一従業員として同社に務めていましたが、元オーナーであり代表取締役社長であった德勝氏の指名により、約半年後の2022年1月に社長を引き継ぎました。増山様がどのような思いで経営を引き継ぎ、どのようなチャレンジをしているのかを伺いました。

 

当初は社長を引き継ぐ自信はなかった。従業員に支えられていると日々感謝している。

 

Q.実際に社長になってみていかがでしたか。

 ある日、会議室に呼ばれた私に先代社長(現会長德勝)から告げられた言葉が「所有を手放そうと思う」でした。私にとってまさに青天の霹靂でした。
そしてこの時初めて、忙しい日々の裏で先代が抱えていた苦悩や想い、人手不足に対する手詰まり感や、あるべき姿との乖離、実現したい会社の未来を知ることになりました。そして5年後を目途に社長を継いでほしいと打診されました。

 その時感じたことを素直に言えば「驚きと、自分には難しい」でした、当時の私は技術者としての自分しか持っておらず、会社を背負うことに対してとても自信をもって応じられる様な器量はありませんでした。しかし私のような人間を拾い育ててくれた会社が好きだったこと、自社の製品が好きであったこと、それに「お前じゃなきゃダメなんだ!」とまで言ってくれた先代の期待に応えたいという思いは確かに持っていたため、5年後に多少なりとも力をつけて応じられるよう努力することに決めました。

 そして譲受の後、NGTGから多くの支援を得て会社が変わっていく途上を共に経験しました。譲受から5か月ほどが経った年末、突然先代から「やはり新年度から社長で行こう!」と打診されました。「え、5年後じゃないの!?」と驚き大変悩みました。相変わらず自信などありませんでしたが「体制づくりには10年かかるからできるだけ早くから取り組むんだ!」という先代の熱意と、NGTGのメンバーからも全面的なバックアップを約束すると言われ、ついに引き受ける形で折れました。
今思えば、最初から先代の掌の上だったように感じますね(笑)

 

Q.どのような経緯で社長になったのでしょうか。

 代表になる以前は技術者としての立場から自分なりにエムエスシー製造の企業理念を解釈し、実践してきたつもりでした。
 しかし実際に代表としての立場から考えたときにまさに企業理念が会社の存在意義そのものであり、真に理解できてはいなかったことを認識しました。
また社長の仕事が多岐にわたりあらゆる知識や経験が必要であることを知りました。自分の変化としては会社のすべての出来事が「自分ごと」になったことが一番の変化であったと感じます。多くの試練も経験しましたが「自分がやらなきゃ誰がやる」と考えるようにしています。
 ありがたいことに、私が社長になっても従業員の態度はあまり大きくは変わらず、むしろ今まで以上に多くの協力をいただけており、日々感謝しています。

 

新しい取組みで従業員の目線が変わってきた。当社の技術をしっかり未来に繋ぐ仕組みを作りたい。

Q. 社長になってからどのようなことに取り組んできましたか。
 社長になってからは、あらゆることは自分事であること、常に周囲に感謝と尊敬をもって接することに心がけています。些細なことや細かいことなども誰かが気づき、やってくれていることで支えられて成り立っていることに気が付くようになりました。
 具体的な取り組みとしては改善提案制度の導入や、原価分析システム、採用体制の強化、幹部層への経営的視点の共有、部署間の情報共有強化などを行ってきました。NGTGからは強力な後押しと支援を頂いており、原価分析を行うための自社開発システムの提供やグループ他社の成果をもとにした採用媒体の紹介など客観的な視点から多くのアドバイスを頂けていることを大変ありがたく思っています。
 改善提案表彰は従業員からも好評をもらっており、改善の積み重ねで工場の見た目がだいぶきれいになり、作業も効率的になったと感じています。また、原価分析の結果を毎月工程会議で共有するようになり、最近では原価意識が薄かった層にも関心を持ってもらえるようになったと感じます。
多くの問題点が見える化されるようになり、定量的な結果が見えることでより具体的な議論もできるようになったと感じます。

 

Q.今後会社をどのように成長させていきたいと考えていますか。

 当社は業界の中でも特殊な立ち位置にあり幸いに激しい競争にも晒されることなく来れましたが、そういった環境に甘えるのではなく切断の技術を通して社会に貢献し続けるという企業理念を実現すべく弊社の持つウェイビングカットという価値をしっかり未来に繋げ、他の分野においても問題解決の力となりえると考え多様なマーケットを模索していきたいと思っています。
 具体的には、職人が持つ熟練の技術をしっかりと受け継ぎ、仕組み化していきたいと考えています。自社に最適化した教育方法を確立し、次の世代の技術力を確保したいと思います。新人教育を通して私自身これまで通りの育て方では多様な価値観のある今は通用しないと感じるようになったためです。
 またNGTGからのIT分野における協力も活かして、社内データ活用を通し合理化できる部分は合理化して生産活動に最適な環境を整えてきたいと思います。